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Japanische Klassiker mit Furigana

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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

Lesen Sie 三国志(八) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N1. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N1 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.604 Zeichen · 391 Bildschirme

Aozora Bunko

二

来るか来ないか知れない敵に備えて、じっと昼夜すこしの油断もならないし、火気はもちろん厳禁だし、害虫毒蛇に襲われながら身動きもならない忍耐一点ばりである。

「なんたるこった。敵も来ないのに幾日も気力を費やしているなどとは。――一体、主将たる者が、無用の意地を張って、物賭などして多くの兵をみだりに動かすということからして怪しからぬ沙汰だ」

慨然と、ひとりの部将が、部下に不平をもらしていた。

折ふし陣地を見廻っていた司馬懿仲達が、ふとその声を聞きとめた。仲達は営所に帰るやいなすぐ左右の者を派してその部将を床几の前に求めた。

「汝だな。先ほど、不平を唱えていたのは」

「いや、そんな、不平などは」

「だまれ、予の耳にはいっておる」

「…………」

部将は恐れ入って沈黙した。

司馬懿は面を改めて云った。

「賭事をなすために兵を動かしたと汝は曲解しておるらしいが、それは予の上官たる曹真を励ますためであり、またただ、魏の仇たる蜀を防がん希いのほかに私心あるものでもない。もし敵に勝たば、汝らの功もみな帝に奏し、魏の国福を共によろこぶ存念であるのだ。――然るに、みだりに上将の言行を批判し、あまっさえ怨言を部下に唱えて士気を弱むるなど、言語道断である」