Japanische Klassiker mit Furigana
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Lesen Sie 丹下左膳 (たんげさぜん) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.229 Zeichen · 389 Bildschirme
七
思う左膳は、壺とやらのとりあいから、どこかの道場のお嬢さんを見そめて、あんなにつくす自分の親切も通らず、一つ屋根の下に住んでいても、いまだに赤の他人――
おまけにあの朝、顔色を変えてチョビ安ともども、駈け出して行ったきり、なしのつぶてである。
「エエ馬鹿らしい! どうしてあたしは、あんな、能といっては人を斬る以外、なんの取りえもない左膳の殿様なんかが、こんなにすきになってしまったんだろう。自分ながら因果な性分だねえ」
苦笑したお藤、ヒステリカルな癇癪を起こして、一人っきりの家で髪をかきむしったり、茶碗をぶつけて割ったり……それも一人相撲と気のついたあげくは、通りがかりの屑屋を呼んであのこけ猿の茶壺を二束三文どころか、ただでくれてしまった。
ブラリと旅に出たんです。住みなれた尺取り横町の長屋に、ベタリと貼られたかしや札。
尺取り虫を踊らせる、奇態な女芸人がいるところから、人呼んで尺取り横町……その名物の本尊がなくなった。
「笠ひとつに、三味線一丁、それにこのかあいいお虫さんさえいれば――」
荒い滝縞に、ずっこけに帯を巻いて、三つに折れるたたみ三味線と、商売道具の尺取り虫、それを小さな虫籠に入れたのを、長い袂へほうりこんだお藤、思いきりよく江戸をあとにした。