Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
「松だよ」
「違いますよ、松じゃあねえよっと。松の葉は触るとちくちくするよ」
ひっそりしたかと思うと、いきなり一人が叫んだ。
「あら! あら! わあるいの」
するともう一つの、ひそひそ声が臆病らしく云った。
「叱られるよ」
佃が家にいると、伸子は悩ましい思いをした。彼は、そんな声を聞きつけると、大人対手のように険しい顔つきになった。そっと下駄を下げて来て庭へ廻し、板塀についている切戸へ忍びよった。彼は音を立てずに掛金をはずすと、突然姿を現し、物も云わずに子供達に向って近づいて行った。ひそひそしていた連中は一目散に逃げ出す。狭い路地に入り乱れて響く跫音が、子供の本気な恐怖を語った。度重なると、滑稽を越えて、伸子は変に寥しい、浅間しいような気がした。
「仕方がないのね、珍しいからよ。――庭へ入れた方がいいわ」
佃は亢奮しつつ、神経質な焦立ちで、
「折角ひとが植えたものを、むしるなんて怪しからん。僕はなかへは入れませんよ、けっして」
伸子は、彼の、頑固な所有慾というようなものを感じるのであった。
散歩に出て伸子が買いたがるのは植木より本であった。古本屋をよく見た。