Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
何か目につくと、彼女はそれをぬき出し、
「これ」
と夫に示した。佃は、その本を手にとって、あっちこっち返して見て、訊きかえした。
「是非なくてはならないもの」
その調子が、伸子をしょんぼりさせた。彼女はあきらめて本を元のところに返した。
「――じゃあ又にするわ」
伸子は、買っても、買わないと同じように、さっぱりしないのを知っていた。彼女は、夫婦として暮して見ると、佃が、もとからたっぷりしない暮しを経験していながら、馴れて大胆に快活に、それを支配することを知らないのを意外に感じた。
伸子は、大概家にいた。本を読んだり、崖下に井戸がある、その井戸端で、長屋の女達が喋るのを聴いたりしていた。永く一日が過ぎる。彼女は、佃が帰るのを待ち切った。彼女は、堤を切ったように話したがり、彼にも喋って貰いたがった。けれども、佃は、伸子が面白がることを、あまり面白いとは感じないらしかった。あまり身を入れて聞かなかった。気が乗って彼の話すのは、多く勤め先の出来事、同僚の噂であった。佃は、低い、これはお前にだけ話すのだが、と云う意味を示した声で云った。
「今日、幹事のところへ用があって二三度行ったら、堤君が、私に小さい声で、幹事に何か御用ですか、と訊いた」