Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
「まあ! いつの間にかいらっしゃったことがあるのね」
その声を合図のように、廊下が鍵のてに曲る角の柱の下へ、阪部が姿を現した。
「やあ」
「よくいらしったね、さあどうぞ」
阪部の部屋は、窓から坂の下の樹木や屋根の見晴らせる、静かなところであった。伸子は、その窓に腰をかけた。
「割合いいお部屋ね、あまり下宿らしくなくって」
「――昔、私がまだ書生の時分からの知り合いでね、ここの親爺は大の阪部党ですよ」
阪部は自分で茶を入れながら、佃に訊いた。
「どうだね、ずーっと順調かね」
「うむ。もう自分じゃあ何ともないようだが、三月いっぱい我慢しましょう。――しかし気になってね」
「はははは。勤人根性という奴があってね、出るべき時に休んでは、休みも休みにならないというわけか――まあ、休める時にうんと休んで、潜勢力を貯えることだね」
伸子は、阪部にだけはどんな口も利けた。
「ね、阪部さん、今日はどんな素晴らしいことがあるの?」
「どうして」
「だって――二人でしめし合せていらしったんでしょう?」
「これは弱ったね、はははは、何か、では特別な趣向でも凝らすんだったが、もう間に合わない――晩の御馳走で勘弁して下さい」