Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
と兵卒のような口調を真似て伸子を笑わせた。夕飯に呼びに来ながら女中が二通手紙を伸子に渡した。下の一つが、日本封筒で、素子がいつも使うのにそっくりであった。しかし、朝一つ受取ったので、彼女からと思えず、怪しみ、裏をかえして見た。矢張り素子から来たのであった。今朝のと同じ日の、夕方の日附であった。
「二十八日に私の仕事が多分一段落つくのです。暫く暇になると思ったら、急にそちらへ行って見たくなりました。邪魔ではいけないから、悪かったら遠慮なく、直ぐ返事を下さい。行ってよい都合なら大抵二十八日の一時に立ちます」
伸子は、歩き歩き読んでいたが、思いがけぬ嬉しさで胸が苦しいようになった。のぼせ、直ぐにいらっしゃいと電報を打とうかと思ったが、ともかくも自分を落着け、食卓についた。亢奮しつつ彼女は祖母に告げた。
「ね、お祖母さま、素敵よ、二十八日に吉見さんが来るんですって」
「ふうん。――何も食物がなくて困るな」
「そんなことかまやしなくてよ。不便なのは解っているんだから」
陽気に箸を取ったが、ふっと伸子は嚥みこんだ飯が喉で塞えるほど情がせきあげて来るのを感じた。今自分をこれほど捕える喜びのつよさにつれ、五年の間自分がどんなに嬉しさというものに飢え暮して来たか、哀れに恐ろしいほどはっきり思いめぐらされて来たのであった。