Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
友達でさえ、これだけあたたかい悦びはもたらしてくれる。なぜ佃が、たった一度でも、何かで思い出すのも嬉しく誇らしい悦びを自分に与えてくれることができなかったろう。尤もこの田舎の家へ彼が来ることは、動坂に拒まれていた。けれども、彼にもし心さえあれば、五年のうちの何かの機会、何かの場所に、ささやかなしかし忘られぬ喜びを結びつけてくれられただろう。悦ばせやすい、そして悦びたがってがつがつしているような自分を――全く考えると寧ろ不思議というくらいなものであった。しんから嬉しかったこと、佃の暖かい心を身にひきそえて覚えたことは何かないか、まさか一つもない筈はあるまい。皆無というのは恐ろし過ぎ、伸子は記憶の中をあわただしく掻きさがした。思い出すのは、自分の真心を信じさせようと熱心に佃を説きつけている自分、絶望を負けん気で覆い紛らそうと力んでいる自分、さもなければ、暗い焔のような男と女のことなどばかりであった。記憶にのこっているほどの場面場面は、どれも頬を流れた涙、やけつくような胸の中を流れた涙の苦々しさを伴って浮んだ。その癖いつも生活の主になって動き求めいていたのは自分だ。