Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
「何さ。……ちッ、うるさい」
お袖は、自分の体へ纏ってくる男の手を、心にもなく、癇癖に振り払いながら、いってもいってもまだ罵り足らないように、
「償い? ……ふん……償いって、どうするんですよ。償えるものなら償ってごらん。この子を、わたしを、元のとおりにして返してください」
と、お燕を抱き上げて、突きつけた。
無心に眠っていたお燕は、びっくりして、泣き出した。その声も、父を責めた。
「オオ、堪忍してくれ」
市十郎が、腰を浮かして、手をさし伸ばしたのと、お袖が、烈しく彼の胸を突いたのと、一しょであった。
「嘘つき。おまえなぞに、そんなやさしい心があるものか。畜生のくせにして」
「お袖っ……」
うしろへ、手をささえ損ねて、市十郎はひッくりかえった。
「あ、あんまりだ。酷すぎる。わしが、わるいといっているのに」
父の悶え、母の悶え、血のつながりは、それが直ちに、子の泣き悶えともなるものか。この時の、お燕の泣きかたは、ただ事ではなかった。火のつくようなその声が、不審を起させたにちがいない。その時、どかどかと、土蔵梯子をたれか上がって来た。
阿能十だった。また、広間の博奕場に見えた顔のごろ侍や得態のしれない男や女たちであった。