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Japanische Klassiker mit Furigana

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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme

Aozora Bunko

「於市じゃねえか。こいつア驚いた。おめえ、いつからお菰になったんだ!」

歩み寄るなり、手を取って、人影まばらな五重ノ塔の裏へ、むりやりに連れて行った。

神田の丁字風呂で、市十郎に置き去りを食わせて以来の対面である。だが大亀は、そんな友情の前科にテレてるような男ではない。かえって従弟の市十郎の余りにも変り果てた見すぼらしさを、蔑み嘲った。

「どうしたい。すっかり痩せ細って、まるで法界坊そッくりじゃねえか。おたがい、米の虫同士が、ウヨウヨと米の喰いつぶしッこをしている世の中に、何も粋狂な、お菰にまでなり下がッてるこたアなかろうによ。ええおい、市の字。しっかりしろやい」

「あ。ありがとう……」

「なに? ありがとうだッて。べら棒め、誰に礼なぞいってるんだ。まるでおめえの声は、幽霊の声だ、腑抜けの面だ。おい市十郎。久しぶりだと、笑い顔ぐらいして見せねえか」

「めんぼくない」

市十郎はいよいよ俯向いた。年暮へきて、小春日のような太陽だったが、心の眩しさに耐えないような姿とも見える。

「聞けば、おめえは、いつぞやお袖にも会ったというじゃねえか」

「えっ。亀次。どうして、それを知っているのか」