Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
越前守を恨むなら、もっとほかに、方法もあろうじゃねえか。――たとえば、男道楽よ。自堕落の仕放題をやって、こうなったのも、あの男のせいだといいふらしてやった方が、おもしろくもあり、おめえにとっても、身の為だろう」
「身の為……」と、お袖はほほ笑んで、「身なぞはとうに捨てている私ですよ」
「ばかをいいねえ。御用を食ったら、それッきりだぞ」
「ああ、いつでもと、待っているのさ。白洲や獄門が恐くて、こんな真似ができるものかね」
「よせ。ばか」
近づいて、不伝は、お袖の肩を抱いた。そして、もし夫婦になる気なら、世帯道具を売り払って、暫く、旅暮らしに出ようじゃないか、金はあるぞと、囁いた。
お袖の手が、不意に、不伝の胸いたを突きとばした。不伝は、うしろの竹束に辷って、
「やっ、何をしやがる。恩を仇で、返すつもりか」
と、わめいた。起ち上がろうとする弱腰を、お袖はまた突き飛ばした。うしろはすぐ河だった。あっという不伝の声と水音が、河の下から水玉になって刎ね上がった。
お袖は一とき、ひた走りに駈けたが、すぐもとの歩調にもどっていた。――これでもう練塀町の不伝の家にも帰れないと思い、何かしら、自分の歩いている突き当りが、もう近づいている気がした。