Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
世間の表情と、人心のうごきは、すぐ奉行所内に、反映してくる。
越前守は、相かわらず、日常どおりに執務しているが、その事では、むしろ本懐であり、望むところとしているふうであった。かれの顔は、数日前より、よほど明るくさえ見えた。――白洲を前に、奉行席へ、着座したとき、そう見えた。
きょうも、例の二名の横目が、傍聴に来ている。
与力席、目安、書記方など、前の仮吟味のときより、一層、粛として、頭かずも幾人か多い。
「袖っ。面を上げい」
越前守が、まずこう口を開くと、おとといの夜とはちがって、お袖は、すぐ顔を上げた。
そして、越前守の顔を、下から凝視した。
「…………」
おそらく牢舎の一日二晩のあいだに、お袖は、一時混乱した頭をとり戻して、いかなる官力の圧迫にも、いかめしそうな裃の人間たちにも、気負けしまいと、心を夜叉のように持って、これへ曳かれて出たものに違いあるまい。
越前守の顔を射た、眸が、それを物語っている。何と、形容すべき眼だろうか。怨みのこもった、憤怒に燃えた、そして呪咀にみちみちた異様な光をもちながら――その底にはなお、あわれ、女であるための、どこか弱き者の涙がいッぱいに溢れかけている……。