Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
忠右どのや、お縫どのにたいしても」
「では……嫌です」
「なにっ。嫌だ?」
「お袖がほんとに倖せになるのでなければ、切れ状は書けません。因はといえば、罪はまったく、この市十郎にあることで、水茶屋奉公はしていましたが、それまでの、お袖は、真白い絹のような処女だったのですから」
「この、大たわけ!」
離した手は、あっというまに、市十郎の横顔を、ぴしゃッと打った。
顔をかかえて、仆れた弟へ、主殿の手は、追うように、またその襟くびをつかんで押した。怒りにまかせて、市十郎の顔を、畳へごしごしこすりつけた。
「養家のてまえもあるに、よくもよくも、そのようなことがいえたものだ。この体を、たれのものと思いおるか。さむらいの家に生れながら、祖先にたいし、御公儀にたいし、身のほどもわきまえぬ奴。こ、この、生れぞこないめが!」
撲られている弟よりも、拳をかためて、打擲している兄のほうが、果ては、泣き顔を皺め、ぽろぽろ涙をながし、疲れきった血相となっていた。
「こう撲るのは、おれではないぞ。貴様ごとき馬鹿者を、おれには、撲るまでの大きな愛は持てぬわい。おれの身をかりて、貴様を打ったのは、亡き父上だ。