Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
悄然と、腰縄で首うなだれてゆく小柄な男――やはり久助にちがいなかった。
「……オオ!」
久助――と喉まで出かかる声を嚥んで、市十郎は暗澹と、胸のふるえを両手で抱いた。南無三、何とか救う手段はないか。罪はかれが犯しても、罪の責任は、自分にある。――この頃、かれが持ってくる小銭や食物は、何に依って得てくるかを、自分も知っていたのではないか。
かれが本来持っているあの親切気、あのお人好し、そして他人の子のよろこびを見るのをもって、無上に自分も他愛なくよろこぶ性質は――どうして悪人といえよう。
だが、あきらかに彼は、泥棒を働いた。いかなる罪をもって律せられても苦情のいえない縄付にちがいない。市十郎は、苛責された。もし気がつく者があれば、怪しまれるほど、苦悶の状を、その面に深く描いた。
――その時、久助の方でも、彼の影を認めたらしい。ふと、足をすくめて佇みかけたが、歩けッと、たちまち縄尻で打ちすえられ、ふし眼がちに、市十郎の方を見ながら、すごすご宵の辻を曲がって行った。
出来心の軽い罪。長い牢舎でもあるまい。出て来たらどんなにも詫びて――と市十郎は、自責のつぐないを後日に期して、その後もその木賃から子を負って、毎日、どこともなく出歩いていた。