Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
――どうだ。世の中は、面白かろう。わけて、裏街道をあるいてみると」
酒が来たので、ちょっと、黙ったが、またすぐ小声と、前屈みになり、こんどは、お袖のことをいい初めた。
「――そんなに、捜していたのかい?」
と、ここへ来る途々から、かれはいったことなのである。
阿能十にいわせれば、
「お袖にゃあおれはちょいちょい会ってるんだ。先月あたりは、毎晩のようによ」
と、いとも易々、匂わせて、市十郎が、さっと顔色をかえたのを横目で見てから――後でゆっくり話すがね……と、ここまで来てしまったのである。
「会わせてやるぜ。いつでも」
阿能十は、ぐっと一杯ほして、その杯を、市十郎に持たせ、
「はやくおれにぶつかれば、いつでも連れて行ってやったものを……」
と、まだ明らかには、居場所を口に出そうとしない。
市十郎は、てもなく焦らされた。かれは、阿能十の語った幕府の上層や奉行所の腐敗に、おもわず義憤の眼をかがやかしかけたが――お袖の居所が知れる緒をにおわせられては、心何ものもなく、あらゆる矜持も失って、阿能十の前に何度も、頭を下げた。
「よし、きっと、会わせてやろう。おれは、大亀のような、ずぼらは嫌いだ。