Japanische Klassiker mit Furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.139 Zeichen · 208 Bildschirme
良材の檜を選んで、最初の鑿を下した松本鯛六は、それから半年余り、この人形一つの為に、精も魂も打ち込んでしまいました。
その代り出来の素晴らしさは、今にも動き出して、物を言うかと思うばかり、さすが物事に馴れた左衛門の長次もこの物語を聞き乍ら、人形に吸い付けられて、眼を動かすことも出来ません。
「斯う言うわけで御座います。ですから、この人形の代金を頂くとなると、千両箱を山に積んでも頭を縦に振ることでは御座いません。小紫の心持の届くように、どうか、両国の小屋の中に飾って、諸人に見せてやって下さいまし、宮川先生の十二ヶ月年中行事に立ち交るようなものでは御座いませんが、閏が一と月あると思って、何処へでも差しかえて頂けば、それに越した幸せは御座いません」
長物語を了って、松本鯛六は、額に浮かぶ汗を拭きます。
「ああ、よく彫りなすった。ただもう恐れ入る外は無い。十二ヶ月の活人形の中へ飾るも飾らないも無い、それを出して下すったら、其の日のうちに江戸中の評判になりましょう。実に大した手際だ」
左衛門の長次は無条件で兜を脱いで了いました。金に望みがあるのと違って、これならどんな判らない興業師の仲間へでも話が通ります。