Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.139 Zeichen · 208 Bildschirme
やがて引き廻しが済んで、鈴ヶ森へ着くと、手当を加えた上、前から用意した磔刑柱に掛けて矢来の中におっ樹てます。お夏はその時までも、少しも悪びれる色もなく、首に母の形見の銀の十字架を掛け青白く引き緊った美しい顔を挙げて声高らかに、
「ベル・シイヌン・サンテ・クルシス――」
と称え続けて居りました。竹矢来の外を十重二十重に囲んだ見物は、雪模様の灰色の空を背景に、磔柱に高々とかけられた美女の――祈りと聖歌とに浄められて、埃も止めぬ神々しい――顔を仰いで、声をもらし涙を垂れました。
やがて祈りは聖歌に変って「サンクトス・ドミヌス・デウス・サバオト――」凛々と銀鈴の如く響き渡りました。
妻のお夏が切支丹宗徒として処刑されると聞き乍らも、妖女の側を離れることの出来なかった三十郎は、この日になって始めて、悪夢から覚めたように、本心に立ち還りました。そして、お夏の歌う聖歌に引き摺られるように、小日向の崇巌院を立ち出でて、鈴ヶ森へ駆け付けました。最早梅仙女の妖しい艶色も、奔放無恥な淫楽も、これを引き止める力はありません。
三十郎は真に韋駄天の如く駆けました、小日向から鈴ヶ森、ざっと四里、それをたった一刻の間に飛んで、刑場近くなった頃はもう綿の如く疲れ抜いて居りました。