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Japanische Klassiker mit Furigana

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しんきだんクラブ

奇談クラブ(全)

野村 胡堂

Lesen Sie 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.139 Zeichen · 208 Bildschirme

Aozora Bunko

性も根も尽き果てて、幾度か往来へ引っ繰り返りそうになると、此の間から耳について離れない祈りと歌の声が、大気を鳴らして、「サンクトス・ドミヌス・デウス――」といとも美妙に聞えて参ります。

それで漸く辿り付いて、刑場の見物を掻き分け、

「身寄の者で御座る――一目逢い度い、通して下され」

竹矢来に飛び付いた時は、非人の槍が二本、

「アリャ、リャン」

両方から突き出されて、お夏の胸に白々と交叉した時でした。

磔柱の上のお夏の目隠しは、あるまじき事ではあるが、何うした機みか、此の時バラリと解けて落ちました。

アッ。眼に入ったものは、胸に交叉した槍の穂ではなくて、矢来の外へ息せき切って飛び付いた夫三十郎の悔悟と失望に歪んだ顔でした。

「お夏」延び上る三十郎、

「あ、到頭帰られた、私は嬉しい、マリヤ様のお蔭で――サンクトス・ドミヌス――」

お夏の頬には、始めて血潮が美しく上りました。同時に槍はサッと引かれて、もう一度突き出すと、槍の穂はお夏の両脇から肩へ抜けて、白無垢の上へ流れる血潮――万事は終ってしまいました。

「お夏、許せ、お夏」

江柄三十郎は、武士姿も恥じず、竹矢来に縋り付いたまま男泣きに泣き入りました。