Japanische Klassiker mit Furigana
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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
Lesen Sie 小出楢重随筆集 (ならしげざっぴつ) von 小出 楢重 (こいでならしげ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.351 Zeichen · 657 Bildschirme
なお、私の家は、先祖代々一子相伝である花柳病専門薬を製造していた。天水香というのは自家製の膏薬の名であり、同時に家の屋号の代用として通用した。よその人は父を天水香はんと呼んだ。
その頃は薬屋が医者の如く、診察しても構わない時世だった。私の家の店頭は朝から、弁当持参のいろいろの男女の客で埋っていた。彼らは何をしに来ているのか、これも私にはわからなかったが、ただ人間というものは、私の店へ来って順番に父から妙な場所へ膏薬を貼ってもらうものだと信じていた。
私はこの膏薬の効能書を丁稚と共に大声で鉄道唱歌の如く合唱したものだった。即ち、かんそ、よこね、いんきん、たむし、ようばいそう、きりきず、腫物一切女○○のきずといった具合に。
その頃、私の通った小学校が島之内の真中にあった。集る処のものは多く、宗右衛門町あたりの芸妓の子、役者の子、仲居の子、商人の子らだった。決して、華族様や政治家や学者の子はいなかった。
ある役者の子供は、まだ昨夜の白粉を耳のうしろに残したままやって来て、時々胸を開けて見せたりした。覗いて見ると白粉と交って、紅色の沁みが一面に残っていた。