Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
この世の中というものは、何時思いも掛けぬ災難が降りかかってくるかわからぬ、一寸先は闇の世界だから、なまじっか、野心なぞ起さずに、もう東京へもどこへも行かないで、どこか北海道の涯へでも行って君太郎と一緒に世帯を持って生涯を送ってしまおうかと、胸の迫るような感慨に打たれたのであった。
そして、今手を握り合って佇んでいる君太郎と私との関係が芸妓とお客とか、芸妓とその情人とか言ったようなものとはどうしても考えられず、私にはまるで頼りどころない、妹の手でも曳きながら、この厳粛な人生の出来事を凝視ているような心地がしたのであった。そんな思いを胸一杯にたぎらせながら、私はそこに茫然と突っ立っていた。
「もう運ばれて行ってしまったわ。さあ、はいりましょうよ。ね」
と、不仕合せな人たちの方へしゃがんで掌を合せていた君太郎に促されて、私もようやく座敷へ戻って来たが、酷寒北海道の真夜中はおそらく零度を五、六度くらいは下っていたろうと思われる。
今までは気もつかなかったが、部屋へ戻って来ると一時に寒さが身に徹えてきてブルブルと胴震いがして、急には口もきけなかった。しかも口がきけなかったばかりか、もう眼が冴えて、床へ潜り込んでもなかなか眠れるものではなかった。