Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
しかし、遠くはなれたこの台所だけは、しーんとして人影ひとつなく、ただ煮物のわきたっている音だけがして、白いゆげをたちのぼらせていましたが、やがてまた戸口から、そうっとあたりを見まわしながらはいってきた黒影がありました。
お稲を送りだした八重かと思いのほか、もう八重のすがたはそれになく、なんとそれはたったいまおくりだされたばかりの下働きのお稲だったのです。
が、これもほんとうのお稲とはだいぶちがいます。目がギラギラと異様にかがやいて……だいいち、ほんとうのお稲ならば、大きなふろしき包みをしょって、いまごろはこけつまろびつ必死になってお小姓街道を村のほうへと逃げ走っていたころだったでしょう。そしてこんな恐ろしいお邸などへ、なにしにノコノコもどってくるわけがありましょう。
ごらんなさい、いまはいってきた怪しげなお稲を!
ギラギラと底光るひとみを四方八方へくばりつつ、ぬき足さし足そうっと流しもとへちかづいていくではありませんか! そしてそこにまたたいている上りがまちの薄暗いあんどんの光にすかしみて、もういちど奥のほうへするどい目をくばると、なんとふしぎや! 人間の女のくせに、けだもののように、耳をピクピクと二、三度ふるわせて、あたりの気配にきき耳をたてています。