Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
もちろん円タクなぞという気の利いたもののあろうはずもなかったから、茂十さんの案内してくれたのに従って街道の方へ出て、逗子通いの乗合自動車の停車場へ出ることにしたが、その途中畑を越した遥かな彼方の小高い丘の上に、椿か桜らしい数本の大木の陰に聳えた和洋造りのこの辺には珍しい立派な家を指さすと、
「あれですよ。あれが、日野さんのお邸だったのですが」
と教えてくれた。
一家死に絶えて今は住む人もない廃家と聞くからには、なんとなく一抹の幽気も感ぜられるのであったが、見た眼には別段屋根にペンペン草も生えていず、日当りのいい今にもそこから美しい都の婦人でも喜々として洋傘をさして現れそうな気のする瀟洒としたものであった。
やがて砂埃をあげて疾走して来た乗合いの客となって私たちは、長い街道を逗子に向ったが、茂十さんの言う写真屋というのは私が今まで何の気もつかずに通り過していた停車場から田越橋の方へ行く道の神社のすぐ前の家であった。自動車はそのすぐ横で止まったが、
「出ています! まだ出ています!」
と茂十さんは車を降りるなり飾窓の方へ眼をやって叫んだ。そして私たち三人は小走りに駈け寄って、その飾窓の前に顔を集めたが、茂十さんに聞くまでもなく、私にはもう判定はついていた。