Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
兄はその頃沼袋というちょうど新井の薬師の裏手あたりの所に住んでいたが、その頃はまだこの辺は淋しい畑や森のあちこちにポツリポツリと新築の大きな家が建ちはじめていた時分で、商店なぞというものはほんの数えるくらいしかなく、言わば郊外のお邸町と言った淋しい感じのする所であった。そして私の乗った車が、今薬師裏を抜けて暗いそのお邸町へと差しかかって来た時であった。どうもさっきから時ならぬ時に車をちょくちょく止めて、変な真似をする運転手だと思っていたが、その途端にチョッ! と苛立たしそうに舌打ちをすると、運転手は、また突然に車を停めた。
「どうも変だなあ! お客さんちょっと待って下さい。……妙なことがあるもんだなあ!」
と車を停めたままハンドルを握りながら、硝子越しにじっと前方の暗を睨んでいるのであった。
「どうしたんだ!」
と私も居合腰をして声を掛けた。
「どうもそれがお客さん、変なんですよ! さっきから二、三度痩せた子供が車の前をうろついていて……」
と運転手は申し訳なさそうに眼を瞬きながら気の抜けたような返事をした。「それがこうやって車を停めて見てもだれもいやしないんですが……何度も同じ子供がうろつくなんて眼のせいかなあ!」