Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
とぼんやりした声を出した。私はそれを聞くと同時にガタガタと震え出しそうな気持がした。自分ながら颯と顔から血が引いてゆくのを感じた。
「やってくれ給え! だれもそんなものはいやしない!」
私の語気が非難するように烈しく運転手には響いたのであろう。
「だれもいない! 不思議だなあ! すみません! やりましょう!」
と呟いた。そして再び車は走り出した。が、ものの五、六間とも進まぬうちに、
「危ない!」
と甲高い運転手の叫びとともに車はズズウと烈しく地を擦って急カーヴを切りながら、すんでのところで道端の溝の中へ片車輪を突っ込まんばかりにして急停車した。
車が停まると同時に、運転手は血相変えて飛び降りた。そして大急ぎで屈み込んで車輪の下を覗き込んだり側面へ廻ったりして、
「今そこにだれかいたんだがなあ!」
とほとんど泣き出さんばかりの声をして茫然と突っ立っていた。暗の中に前灯に照らされたその運転手の顔ももう私には見ていられぬような気持がした。
「歩こう!」と私は叫んだ。「こんなことばかりしていられやせん! 料金は家で払おう! すぐそこだからついて来てくれ給え!」
「すみません、お客さん! こんな莫迦なことはないんですが……」