Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.671 Zeichen · 252 Bildschirme
南の方、障子を少し隙かせると、春の夜の香わしい風が、ほの暖かく物の芽の匂いを吹き送って、わざと灯心を小さくした行灯の灯を、消してはならないほどに明滅させて居りました。
夜は漆のように真っ暗でした。この時、この嬌態を覗いてくれるものは如法の闇だけ、岩太郎はお滝の柔らかい膝に凭れ、お峰の忍び駒で、近頃覚えたばかりの小唄を唸って居たのです。
時々、身体を起して、お滝の注いでくれる盃をふくみました。十年前に出雲の国から出て来たこの山男も、金と時間があって、江戸の空気に同化して行く器用さがあったために、何時の間にやら一とかどの蕩児になり切って、浅酌低唱に、千金の宵を過す趣味も心得たのでした。
だが、この逞ましい生活力の持主なる岩太郎にも、一脈の恐怖はありました。解語花ともたとえられる、手入らずの処女お滝、――言いようもなく可愛らしく清純で、岩太郎にうずくほどの食欲を感じさせる娘が、不思議に手をさし伸べる度毎に祟りをなして、好きものの岩太郎にとって、永久に禁厭であるらしい存在だったことです。
それはまた、一つの冒険味を伴う魅力でもあり、嗜虐的な欲望の的でもありました。