Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.671 Zeichen · 252 Bildschirme
局面はまさに、どんでん返しになりそうです。
「こんなことを申してよいか、悪いか、――私は、今まで遠慮して居りました。家の中から、悪者を出し度くなかったからでございます」
「――」
お通は言い淀みました。いかにも打ち開け難そうに、――でも、思い定めた様子で、静かに続けるのです。
「まだ残っているかもわかりませんが、二階の降り口の階子段に、油が塗ってありました」
「油?」
平次は曲者の険悪な思いつきに、妙な反感を誘われました。
「二つ目の段です。あとで、そっと拭いて置きましたが、なかなか取れそうもありません」
「成程、階子段の油は、外から入った者の仕業じゃ無い」
「それから――」
お通は言い淀むのです、何んかしらこの女は、重大な鍵を握っているに違いありません。
「それから?」
「私はもう、此先は」
お通は双手に顔を隠して、絶望的にうな垂れるのでした。切られたばかりの髪の毛は、紐にも櫛にも留らず、額へザクリとかかるのを、もう払い上げようともしません。
濃いお納戸地の袷と、黒っぽい帯までが、行い済した聖僧の法衣に見えて、顔のやつれ、膝に揃えた十指のわななき、限りない痛々しさです。