Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

Lisez 大岡越前 (おおおかえちぜん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 218 436 caractères · 437 écrans

Aozora Bunko

「刑部っ」

それを、求めていた市川義平太が、馳け上って、すでに、火となっている障子際に近づくと、

「寄るな、馬鹿野郎」

さすが、大悪である、自ら火を放って、立ち腹を切りかけていた。

赤不動の怒相を見るような、かれの一瞬の顔は、正視もできないものだったが、義平太は、火をくぐって、敢然、その悪像へ、組みついて行った。

――だが、縛げてみると、刑部は、舌を噛んでいた。

「駕籠屋さん、火事じゃないかえ。空が、赤いが」

「ほんとに、火事のようですぜ」

「どこ?」

「さあ」

「ちょっと、駕籠から降ろしておくれ」

鶯橋の崖坂を下に見て、ちょうどその頃、二挺の駕籠が、女の客をふたり、降ろしていた。

お袖とお燕であった。堺町の歌舞伎飴のみやげを持って、星と火との、散りまじる夜空を仰いで、しばらく、何か考えていた。

「駕籠屋さん。御苦労さん、ここでいいのよ……」

お燕と一緒に、坂を下って、鶯谷の橋袂まで来ると、かの女の六感は、何かをもう覚ったらしく、

「お燕、いけないよ」

急に、もとの上野の裏山の方へ、走りかけた。

「――待てっ」

するどい声が、あとを追った。しかし、あたりの山木立は、彼女たち二つの影を、すぐ何事もないようにどこかへ隠した。