Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

Lisez 大岡越前 (おおおかえちぜん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 218 436 caractères · 437 écrans

Aozora Bunko

もちろんそれは市十郎に話しかけているのだが、市十郎は、机へ倚り、両手で頭をかかえたきり、返辞もしなければ、ふり向きもしない、背中で聞いているだけである。

眼は、書物へ落していても、もとより市十郎の心は、どこにあるやら、乱れに乱れ、生きているそらもないにちがいない。夜来、家族も、召使も、かれの部屋を、覗きもしなかった。が、一切はかれにも分っていた。かれは、自ら作った牢獄の中に、自ら最大な苦刑にかかっていた。

「おれも悪かったのさ」

返辞はなくても、戸棚の中の小声は外の雨のように、独りぽそぽそと話しかけてやまなかった。

「お袖には、前々から、おめえに会わせてくれ、連れて来てくれと、おれもどんなに、せがまれたかしれなかった。ところが、この間も話したようなお犬小屋一件からは、こッちの身一つも、危くなり、梅賀の家へも寄りつかねえので、女心のやきもちから、お人よしの久助をくどいて、とうとうやッて来ちまったにちげえねえ」

戸棚の声がとぎれると、雨の音が、耳につく。雨は、日暮れに近づくほど、いとど蕭条のわびしさを加えていた。

「……なあ、於市、おめえは、あんなに実意のある女を、かわいそうと思わねえのか。