Classiques japonais avec furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lisez 大岡越前 (おおおかえちぜん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 218 436 caractères · 437 écrans
かご屋は、かれを連れて、だらだら坂をすこしのぼった。
古い寺侍の家ばかりがある。その一軒の、わけても古色な冠木門を、かご屋が指さした。
――すると、その門や、あたりの様とは、余りにもふさわしくない艶やかな絵日傘が、門の蔭から、牡丹の咲くように、ぱちんと開いた。
「……おや?」
と、物蔭へ、とび移って、ひとみをこらしていると、その牡丹日傘につづいて、紺地に、燕のもようを抜いた地味な日傘がまた開いた。
日傘と日傘は、連れだって、坂をのぼり、鶯橋に姿を見せ、上野の寛永寺裏の方へ渡ってゆく。
「……お袖と、お燕の母子だ。ああ、あの美しい姿が、どうして、世を呪い、江戸町奉行を、苦患の底へ、もだえさせている悪魔だと、たれの眼に見えよう」
左右太は、眼に見てさえも、もしや、人ちがいではないかと、自分の行動を、いくたびも、疑ってみた。
「どこへゆくのか?」
かれも、あらゆる気をくばって、しかも、そ知らぬふりを装いながら、鶯橋の半ばへかかった。
美しい母子の日傘は、もう向うがわの上野裏の坂へ、のぼりかけている。
――と。その日傘が、くるりと、まわって、白い顔が二つ、あざらかに、こっちを見てホホ笑んだ。