Classiques japonais avec furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Lisez 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 209 260 caractères · 418 écrans
九
血はただしくひとつであった。
いやその血は、このご父子だけが一であるはずはない。この国土のうえに生業するものすべてひとつの筈であった。それを、強いて複雑に、異ならしめるものは、制度、文化、その折々の世相、個々の利害など、そういうものから来る観念の他人でしかない。
(何かわしは、学問の根柢からすこし考え直す必要をおぼえてきた)
卜幽人見又左はその帰り途で、しみじみと、辻了的に告白した。
了的もふかく考えこんでいた。
修史の大業は始められた。
もちろん準備の程度に。
明暦三年、かれの三十歳頃、ようやく具体化されて駒込の下屋敷に修史館をひらき、当時の名ある学者を史寮に網羅して、いよいよ実際的な研究と編纂に従事しだした。
同時に、あらかじめ又左などが憂いのひとつとしていた財力――出費の額は、想像以上な数字にのぼって行った。
九
寛文十二年というと、かれはもう四十五歳、宿志を立ててから二十七年。史寮を設けてそれに着手してからちょうど十五年になる。
その年、史寮を移して、小石川の邸内のほうへ、新たに「彰考館」をたてた。
高台の勝地であった。
後楽園のさくらや、常盤木をこえて、富士がよく見えた。