Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

Lisez 大岡越前 (おおおかえちぜん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 218 436 caractères · 437 écrans

Aozora Bunko

女たちは、ここの内緒へ、久助が勘定を払ったのを見て、

「オオ。可愛い子だ」

と、お燕を抱きとって、あばき合ったが、やがてそれが市十郎の子だと知ると、俄然、邪けんに突ッ返して、

「まあ、憎らしいね」

と、こんどは、市十郎をとり巻き、どうしても、返さないと、執こくひきとめた。

女たちをもぎ離して、市十郎は逃げるように戸外へ出た。うしろで、キャッキャッと、笑い声がしたが、道も見えない心地で、鎌倉河岸まで馳け出した。

「市の字。ひどいよ。逃げちゃあ、ひどいや。自分の子だぜ、この餓鬼は。――待ってくれよ、待てやい」

久助も、うしろから飛んで来た。お燕のくびが、宙へ向いて、がくがく揺られぬいて来る。市十郎は、振り向いて、棒のように立ちすくんだ。

「亀次は? そして、お袖は?」

もう散り初めてきた柳並木を、市十郎は、人魂のように、力なく歩きながら、早口に訊ねた。

そして久助の口から、大亀の突拍子もない行動やら、お袖が、あの夜以来、消息がなくなったことなど聞いて――彼の顔は、お濠の水よりも青くにごった。

「どうする? ……。市の字」

お人よしの久助も、背中の子どもは、持て余し気味だ。