Classiques japonais avec furigana
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
Lisez 松のや露八 (まつのやろはち) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 125 597 caractères · 253 écrans
先の方が、無理がない」
露八は、独り言に云って、それから、橋上の行列に、大声を揚げ、
「ご苦労に存じますっ。江戸の者に代わって、お礼のため、ここでお見送り申し上げておるのでござる。――ご苦労に存じますっ」
と、呶鳴った。
すると、橋上の兵たちは、欣んでしまった。
「やあ」
「やあ」
「ようっ、別嬪」
他愛のない歓呼を揚げて、
「ばんざアいっ」
と、無数の手を振った。
露八も、
「会津様、ばんざアいっ――」
と、船から赤誠を送った。
弾はもう来なかった。橋の上はまた、日傘と駕と往来の人通りに、常のような静かな埃になった。
「アア、怖かった」
芸妓たちは、這いだして、醒めた顔をお互いに見合いながら、すぐおかしがった。
越中島の砲術調練場でも、パチパチと、豆を煎るような小銃の間に遠雷のような、八斤砲の音がしていた。
「戦が、あるのでしょうか」
お菊ちゃんだけは、先刻から澄まし込んでいた。露八は、お菊ちゃんの度胸に少なからず驚いたし、お菊ちゃんは、急に露八を認めだしたように、彼へ話しかけた。
「戦ですか。さあてね?」
露八は、あるともないとも、ふだん考えていない問題だったので、首を傾げた。