Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Lisez 松のや露八 (まつのやろはち) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 125 597 caractères · 253 écrans

Aozora Bunko

二

台所の水障子を開けて、女按摩のお吉が入ってきた。

お吉は、父親の知れない子どもを一人かかえていた。毎晩、隣家の露八の家へ子を預けて稼ぎに出るのだった。

揺り起こされて、

「お……。お吉ッつぁんか」

露八は、渇いた唇を、舐めまわした。

「もう、九刻かい」

「過ぎましたよ」

「お蔦は、どうしたか。まだ帰らない」

「また、山じゃございませんか、春帆楼や、月波楼へゆくと、芸妓衆も、おそくなりますから」

「さ、お由坊を、返すぜ。そっと、すぐ寝かしてやんな。無邪気だなあ、このごろあ、俺をほんとの父親とでも思うのか、よく眠ることさ」

「毎晩、すみませんね」

「なあに、どうせ、退屈している俺だもの、俺の方が、紛らわしてもらって、有難えくれえなもんだ。……よしかね、そうら」

抱き上げて、子供を渡してやると、露八はあわてて、

「おや、いけねえ」

と、立ち上がった。

「どうかしました」

「お尿ッこを、しちまいやがった」

「あれ、まあ、どうしましょう」

お吉が狼狽して、子供を畳へ置こうとすると、露八は、

「イイヨイイヨ」

着物の前を抓んで台所へ駈けて行った。

閉め忘れた引窓から、四角な月の光が板の間に落ちていた。