Classiques japonais avec furigana
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
Lisez 松のや露八 (まつのやろはち) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 125 597 caractères · 253 écrans
頭の初秋
一
「どうも、面目なくて」
「ただ、それが、幕吏の手へ渡ると、他人に迷惑をかけねばならんので、それだけが、気懸りであったが……」
「それだ」
庄次郎は、縁へ、身を伸ばして、
「小倉庵の長次が、捕手をつれて、藩邸の外まで来ている。今のうちに、裏門からお逃げなさい。――これだけが、お礼の寸志。――それを、報らせるため、手引をすると偽って、これへ来たのだ」
「ほ……」
渋沢は、明るい昼を、見まわして、何か、咄嗟に、意を決したらしい。
「かたじけない」
彼が、書斎の障子を閉めたので、庄次郎は藩邸の塀の際まで行って、塀のみねから、外部の動静をのぞいていた。
神田橋の袂に、小倉庵の姿が見えて、塀の上に生えた彼の首に気づくと、眼で、合図をたずねた。庄次郎は首尾のよさを告げるように、手を動かして見せた。
すると、後ろで、
「やっ、おのれはっ」
聞いたような声がした。
振り向く間に、脚を引っ張られて、庄次郎は大地へ、もんどり打っていた。
頭の初秋
一
「あ痛っ、あ痛っ」
庄次郎は、頭をかかえた。
その頭を拳骨で、ぽかぽか撲りつけながら、男泣きに泣いているのは、藩邸の近習番頭取――庄次郎の父、土肥半蔵だった。