Classiques japonais avec furigana
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
Lisez 松のや露八 (まつのやろはち) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 125 597 caractères · 253 écrans
三
と、武市が正直に云った。
「それごらんなさい」
と、今度は、桂を責め立てて、
「さあ、おっしゃい」
「何を」
「白ばっくれないで」
「――弱ったなあ」
「江戸の女は、みんな、間諜者と思ってるんでしょう」
「そんなことはない。……じゃあ話すが、その代りにお前の家へ、少しばかり、迷惑を頼むぞ、いいか」
「どんなことですか」
「それを先に承知しなければ話せん」
「狡いからね、桂さんと来たひには――」
「いや、冗戯でなく」
語尾が、真面目になった。
「え。よござんす」
「じゃ打ち明けるが……」
と、桂は、露八の顔をじろりと見た。そして、
「坊主、おまえは、ちょっとの間、階下へ遠慮しておれ」
三
露八が、階下へ去ると、桂は、声をひそめて、
「実は、拙者の友人で、土肥八十三郎という者が、ちと嫌疑をうけて、入牢した」
こう話し出したのだった。
桂と、土肥八十三郎とは、斎藤塾や大橋訥庵の家などで、懇意になって、書生時代からの旧友であった。いつの間にか、思想上にも共鳴して、桂が、長州へ帰った後も、文通を絶たないでいたし、なお、京都に乗り出して、勤王運動の実践に桂が奔命し出してからは、常に、密書を交わして、江戸の消息を彼に与え、また京洛の消息を彼から享けていた。