Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Lisez 松のや露八 (まつのやろはち) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 125 597 caractères · 253 écrans

Aozora Bunko

「お席へ、お着きくだされい」

「まず、其許から」

「いや、お先へ」

「どうぞ、お年役に」

「まあ、まあ」

肝腎な広間だけが空いていて、人々は、お互いに、謙譲の美徳をしめしあってばかりいて果てしがない。

「聟殿が、てれまする」

老人から、ぼつぼつ、着席する。やがて、土肥家の側が、ずらりと、坐り終わったところで、花嫁は、つのかくしを、俯向けて、庄次郎のそばへ、楚々と、手を曳かれてきた。

裾模様が、自分を、圧するように側へ坐った。銀釵が、きらりと灯を射る。庄次郎は、どきっとした。

一生の運命が決まるのだ。もう、お喜代も、縁なき路傍の石になるのだ。

花聟は、憂鬱らしい。初めから気のない縁談だった。叔父が、いい気持で、でッち上げた今夜なのである。目出度いのは、いったい誰だ?

ふと。

庄次郎は眼の隅からあかの他人みたいな花嫁を見た。見合いすらしなかったので、実物は、今が初めてなのである。

(あっ……)

あぶなく、庄次郎は、声を発すところだった。

お喜代じゃないか!

板新道の――

(違う)

落ち着いて、横目を、繰り返して見ると、違うことは違うが、よく似ている。実に、お喜代によく似ているのだった。