Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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あめしょうしょう

雨瀟瀟・雪解 他七篇

永井 荷風

Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans

Aozora Bunko

変りのないのは狭い往来を圧して聳立つ長い監獄署の土手と、その下の貧しい場末の町の生活とです。

私の門前には先ず見るも汚らしく雨に曝らされた獄吏の屋敷の板塀が長くつづいて、それから例の恐しい土手はいつも狭い往来中を日蔭にして、なおその上に鼬さえも潜れぬような茨の垣が鋭い棘を広げています。土手には一ぱい触れば手足も脹れ痛む鬼薊が茂っています。

私は以前二百十日の頃には折々立続くこの獄吏の家の板塀が暴風で吹倒される。すると往来には近所の樹木の吹折られた枝が無惨に落ち散っているその翌日の朝、きっと円い竹の皮の笠を冠り襟に番号をつけた柿色の筒袖を着、二人ずつ鎖で腰を繋がれた懲役人が、制服佩剣の獄吏に指揮されつつ吹倒された板塀をば引起し修繕しているのを見たものです。夏の盛りの折々にはやはり一隊の囚人が土手の悪草を刈っている事もありました。それをば通行の人々が気味悪そうな目付をしながらしかもまた物珍しそうに立止って見ていました。

土手はやがて左右から奥深く曲り込んで柱の太い黒い渋塗りの門が見えます。その扉はいつでも重そうに堅く閉されていて、細い烟出しが一本ひょろりと立っている低い瓦屋根と、四、五本の痩せた杉の木立の望まれる外には、門内には何一つ外から見えるものはない。