Classiques japonais avec furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans
四
と再び静かな跫音を梯子段の下に消してしまった。
四
家中はそれなり寂として物音を絶やした。今までは折々門外の小路に聞えた夜遊の人の鼻唄、遠くの町を流して行く新内の連弾、枝豆白玉の呼声なぞ、いつ深けるとも知らぬ町の夜の物音は忽ち彼方此方に鳴り出す夜廻りの拍子木に打消される折から、浅草寺の巨鐘の声はいかにも厳かにまたいかにも穏に寝静まる大江戸の夜の空から空へと響き渡るのであった。すると毎夜種油の費を惜しまず、三筋も四筋も燈心を投入れた偐紫楼の円行燈は、今こそといわぬばかり独りこの戯作者の庵をわが物顔に、その光はいよいよ鮮かにその影はいよいよ涼しく、唐机の上なる書掛の草稿と多年主人が愛翫の文房具とを照し出す。
孟宗の根竹に梅花を彫った筆筒の中に乱れさす長い孔雀の尾は行燈の火影に金光燦爛として眼を射るばかり。長崎渡りの七宝焼の水入は焼付の絵模様に遠洋未知の国の不思議を思わせ、赤銅色絵の文鎮は象嵌細工の繊巧を誇れば、傍なる茄子形の硯石は紫檀の蓋の面に刻んだ主人が自作の狂歌、
名人になれ/\茄子と思へども
とにかく下手は放れざりけり
という走書の文字までをありありと読ませるのであった。