Classiques japonais avec furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans
五
悲しむべきは何につけても勇気の失せ行く老境である。
通り過ぎる村雲がいつの間にか月を隠してしまった。すると最前から瞬きしていた石燈籠の火も心あり気にはたと消えるを幸い、二人の男女は庭の垣根に身を摺寄せて互の顔さえ見分けぬほどな闇の夜をかえって心安しと、積る思いのありたけを語り尽そうと急れば、一時鳴く音を止めた虫さえも今は二人が睦言を外へは漏さじと庇うがように庭一面に鳴きしきる。やがて男は名残惜し気に幾度か躊躇いつつも漸くに気を取直し地に落ちた手拭に再び顔をかくして立上ると、女も同じく落ちたる櫛に心付ながら乱れた姿を恥らう色もなく少時寄添い、やがて男が出て行く庭木戸を閉めた後までもなかなかその場を立ち去りかねた様子であった。
五
翌日の朝種彦は独り下座敷なる竹の濡縁に出て顔を洗い食事を済ました後さえ何を考えるともなく折々毛抜で頤鬚を抜きながら、昨夜若い男女の忍び逢ったあたりの庭面に茫然眼を移していた。折から、「おや先生もうお目覚でいらッしゃいますか。」
「大層お早いじゃ御座いませんか。」といいながら愛雀軒という扁額を掛けた庭の柴折戸を遠慮なく明けて入って来たのは柳下亭種員に笠亭仙果と呼ぶ両人の門弟である。