Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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あめしょうしょう

雨瀟瀟・雪解 他七篇

永井 荷風

Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans

Aozora Bunko

六

」

「何に致せいやな恐ろしい世の中になったもので御座います。この分では先生。とても『田舎源氏』の後篇もいつ拝見致される事やら、情ない事で御座いますなア。」

「私も最う追々に取る年だ。世間の取沙汰の静になるのを待っている中には大方眼も見えず筆を持つ手も利かなくなろう……。」

淋しい微笑と共に種彦は言葉を絶やした。二人の門弟も今は言出すべき言葉なく、遣場のない視線をば追々に夏の日のさし込んで来る庭の方へ移したが、すると偶然垣根の外には大方一月寺あたりから来る虚無僧であろう、連管に吹き調べる「虚空鈴慕」の一曲が一座の憂愁をば一層深くさせるようにいとど物淋しく聞え出すのであった。

六

夏の盛の六月もいつか晦日近くなった。お江戸の町々を呼歩く蚊帳売の声と定斎売の環の音に、日盛の暑さは依然として何の変りもなかったが、とにかく暦の表だけではいよいよ秋という時節が来ると、道行く若いものの口々には早くも吉原の燈籠の噂が伝えられ、町中の家々にも彼方此方と軒端の燈籠が目につき出した。

土用の明けるその日を期して、池上の本門寺を始め諸処の古寺では宝物の虫干かたがた諸人の拝観を許す処が多い。