Classiques japonais avec furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans
に上っているものは甚だ少い。見渡す処、死んだ魚の眼の色は濁り淀みその鱗は青白く褪せてしまい、切身の血の色は光沢もなく冷切っているので、店頭の色彩が不快なばかりか如何にも貧弱に見えます。西洋の肉売る店の前を過ぎて見るから恐しい真赤な生血の滴りに胆を消した私は、全くその反対、この冷い色のさめた魚肉が多数の国民の血を養う唯一の原料であるのかと思うと、一種いわれぬ悲愁を感せずにはおられません。ましてや夕方近くなると、坂下の曲角に頬冠りをした爺が露店を出して魚の骨と腸ばかりを並べ、さアさア鯛の腸が安い、鯛の腸が安い、と皺枯声で怒鳴る。そのまわりには、児を負った例の女房共が群集して大声に値段を争う。
大空は砂で白くなった瓦屋根の上に、秋の末の事ですから、夕陽の名残が赤いというよりもむしろ不快な褐色に烈しく燃え立っているので、狭い往来の物の影はその反対に夜の闇よりもなお強く黒く見えます。勤め先からの帰りと覚しい人通りが俄かに繁くなって、その中にはちょっとした風采の紳士もある。馬に乗った軍人もある。人力車も通る。しかし両側の人家ではまだ灯一つ点さぬので、人通りは真黒な影の動くばかり、その間をば棒片なぞ持って悪戯盛りの子供が目まぐるしく遊びまわっている。