Classiques japonais avec furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans
」
「なに先生がお帰り。」
いう間もおそし、一同はわれ遅れじと梯子段を駈け下りて店先まで走り出ると、差翳す半開きの扇子に夕日をよけつつ静に船宿の店障子へと歩み寄る一人の侍。これぞ当時流行の草双紙『田舎源氏』の作者として誰知らぬものなき柳亭種彦翁であった。細身造りの大小、羽織袴の盛装に、意気な何時もの着流しよりもぐっと丈の高く見える痩立の身体は危いまでに前の方に屈まっていた。早や真白になった鬢の毛と共に細面の長い顔には傷しいまで深い皺がきざまれていたけれど、しかし日頃の綺麗好に身じまいを怠らぬ皮膚の色はいかにも滑かにつやつやして、生来の美しい目鼻立の何処やらにはさすがに若い頃の美貌のほども窺い知られるのであった。
種彦は今日しも老体の身に六月大暑の日中をもいとわず、予てより御目通りを願って置いた芝日蔭町なる遠山左衛門尉様の御屋敷へと人知れず罷り越したのである。仔細というは外でもない。去頃より御老中水野越前守様寛政御改革の御趣意をそのままに天下奢侈の悪弊を矯正すべき有難き思召により遍く江戸町々へ御触があってから、已に葺屋町堺町の両芝居は浅草山の宿の辺鄙へとお取払いになり、また役者市川海老蔵は身分不相応の贅沢を極めたる廉によってこの春より御吟味になった。