Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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あめしょうしょう

雨瀟瀟・雪解 他七篇

永井 荷風

Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans

Aozora Bunko

。その正面に当ってあたかも大きな船の浮ぶがように吉原の廓はいずれも用水桶を載せ頂いた鱗葺の屋根を聳しているのであった。

薄く曇った初秋の空から落る柔かな光線は快く延切った稲の葉の青さをば照輝く夏の日よりもかえって一段濃くさせたように思われた。彼方此方に浮んだ蓮田の蓮の花は青田の天鵞絨に紅白の刺繍をなし打戦ぐ稲葉の風につれて得もいわれぬ香気を送って来る。鳴子や案山子の立っている辺から折々ぱっと小鳥の飛立つごとに、稲葉に埋れた畦道から駕籠を急がす往来の人の姿が現れて来る。それは田圃の近道をば田面の風と蓮の花の薫りとに見残した昨夜の夢を託しつつ曲輪からの帰途を急ぐ人たちであろう。

種彦は眺めあかすこの景色と、久ぶりに取上げる杯の味と、埒もない門弟たちの雑談とに、そぞろ今日の外出の無益でなかった事を喜んだ。全く気に入った景色、気に入った酒、気に入った雑談。この三拍子が遺憾なく打揃うという事は人生容易に遇いがたい偶然の機を俟たねばならぬ。偶然の好機は紀文奈良茂の富を以てしてもあながちに買い得るものとは限られぬ。女中が持運ぶ蜆汁と夜蒔の胡瓜の酸の物秋茄子のしぎ焼などを肴にして、種彦はこの年月東都一流の戯作者として凡そ人の羨む場所には飽果てるほど出入した身でありながら、考えて見れば雨や風のさわりなく主客共に能く一日半夜