Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あめしょうしょう

雨瀟瀟・雪解 他七篇

永井 荷風

Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans

Aozora Bunko

か。」というと母はちょっと竜子の顔を見てすぐに笑顔をつくり、「病気でもないのに、お気の毒です。」と言った。

東京に還ってからその年は冬になっても母子二人ともに風邪一つ引かなかったので、竜子は岸山先生の姿を見ずに間もなく十七の春を迎えた。

梅がさきかけた時分、或る日学校からの帰り道竜子は電車の中で隣に腰をかけている二人連の見知らぬ男の口から、茗荷谷という自分の住んでいる町の名と、小林という自分と同じ名前が幾度か言出されるのをふと聞きつけて何心なく耳を澄した。二人とも洋服を着た三十代の男で頻に岸山医学士の事を噂している中に確に母の京子と覚しい或女の事が交えられている。竜子は車体の動揺車輪の響と乗客のざわつく物音にもかかわらず二人の談話の何たるかを明かに推察することが出来た。急に顔が火のようにほてって来る。胸の動悸が息苦しいほどはずんで来る。電車がとまった。竜子はついと立上って込合う乗客を突きのけて車を下りた。「乱暴な女だな」と驚いたもののあった位なので竜子は停留場のいずこであるかも暫くは知らなかった。

空は晴れているが風が強いので面も向けられぬほど砂ほこりの立つ中を竜子は家まで歩き通しに歩いた。