Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans
「おじさん、おそいねえ。あたい、ペコペコだよ。」と叱りつけるような鋭い調子で言ったが、爺さんは別に返事もせず、やはり退儀そうな、のろまな手付で岡持の蓋をあけ、
「お前のは何だっけ。蓮と菎蒻に。今日はもうおこうこは無えんだよ。」と丼を一つ取出して渡した。
年は既に五十を越して、もう六十代になっているかも知れない。盲目縞の股引をはき、じじむさいメリヤスのシャツの上に背中で十文字になった腹掛をしているのが、窮屈そうに見えるくらい、いかにも頑丈な身体つきである。額と目尻に深い皺が刻み込まれた円顔には一杯油汗をかいていながら、禿頭へ鉢巻をした古手拭を取って拭こうともせず、人の好さそうな細い目を絶えずぱちくりさせている。
わたくしが写真をとって大喜びに喜ばせてやった爺さんというのは、丼を持って来たこの出前持なのである。
じいさんは毎日時刻を計って楽屋の人たちの註文をききに来た後、それからまた時刻を見はからって、丼と惣菜や香の物を盛った小皿に割箸を添え、ついぞ洗った事も磨いた事もないらしい、手のとれ掛った岡持に入れて持運んで来るのである。年中めったに休んだ事はないそうだが、どこに家があるか、女房子供があるのかないのか、そんな事は楽屋中誰一人知っているものはない。