Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans
わたくしは家へかえってその夜すぐフィルムを現像して見た。露出は思ったよりもよくできていたが、ふと気がついて見れば、勲章のつけどころが規則通りではなく、軍服の胸の右側になっていた。これはその時脱捨ててあった衣裳へ、踊子が勝手次第に勲章を縫付けたためか。あるいは爺さんも年をとって思いちがいをしたためでもあろう。
わたくしは仕方がないから引伸して焼付をする時、フィルムの裏表を逆にして、見たところだけをそれらしく紛らせ、十日ほど過ぎてから楽屋へ持って行った。
「鮫屋は来ないなア。今日は。」とわたくしは暫く待っていた後、踊子の一人にきいて見た。
「あれッきり来ないのよ。」
「じゃ、丼は誰が持ってくるんだ。困るだろう。」
「外の家のものを食べるから困らないわ。」
話はそれきりである。
また一週間ほどたって遊びに行って見たが、その時には楽屋中もう誰一人、鮫屋の事をきいても返事をするものもない。そんな親爺がこの楽屋へ丼飯なんぞ持って来たことがあったのかと、思返して見ようとする者すら、一人もないような有様であった。
わたくしは爺さんがいつも酔ったような赤ら顔に油汗をかき、梯子段の上り下りも退儀そうであった様子から、脳溢血か何かで倒れたものと、勝手な考方をした。