Classiques japonais avec furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans
すると庭中は空に聳ゆる高い梢から石の間に匍う熊笹の葉末まで一斉に水晶の珠を連ね、驚くばかりに光沢をます青苔の上には雲かと思う木立の影が長く斜に移り行き、日暮しの声と共に夕暮が来ます。風鈴の音は頻りに動いて座敷の岐阜提灯に灯がつくと、門外の往来には花やかな軽い下駄の音、女の子の笑う声、書生の詩吟やハーモニカが聞こえ、何処か遠い処で花火のような響もします。新内が流して行きます。夜が次第にふける……
枕に就いて眠ろうとすると、雨戸の外なる庭一面縁の下まで恐しいほどに虫が鳴き立てます。凡そ何万匹の昆虫が如何なる力に支配され何を感じてかくも一時に声を合せて、私の身のまわりに叫ぶのでしょう。私はふと限りもない空の下雄大なる平原の面に唯だ一人永遠の夜明けを待ちつつ野宿しているような気がして、閉した瞼を開いて見ると、今にも落ちて来そうな低い天井と、色も飾もない壁と襖とが、机の上の燈火に照らされて薄暗く狭苦しく私の身体を囲っているのです。限られた日本の生活の深味のない事がしみじみ感じられます。突然屋根の上にばらッばらッと破れた琴を弾くような雨の雫の落ちる音。樹木に夜風の吹きそよぐ響が聞えます。