Classici giapponesi con furigana
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さんごくし
三国志(五)
吉川 英治
Leggi 三国志(五) (さんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N1. Tocca una parola per il significato.
N1 · avanzato · kanji e kana moderni · 325.249 caratteri · 653 schermate
彼女の心はもう呉の空へ飛んでいる。なにをいわれても唯々としていわれるままにうごいていた。嬋娟にして男まさりな呉妹君といわれ、その窈窕たる武技も有名な夫人であったが、国外遠く嫁いで、母の危篤と聞いては、やはり弱い女に過ぎなかった。
黄昏れごろ。
ことし五歳の阿斗をふところに、夫人は、車にかくれて、城中から忍び出た。
呉以来、側近くかしずいている三十余人の侍女は、みな小剣を腰に佩き、弓をたずさえて夜道をいそいだ。
沙頭鎮の埠頭に、車はつく。船の燈は暗く波間にゆれていた。
ざわめく蘆荻のあいだから船は早くも離れかけた。帆車がきしる。怪鳥のつばさのように帆は風をはらむ。
「待てっ。その船待てっ」
岸の暗がりに、馬のいななきやら剣槍のひびきが聞えた。
周善は艫に立って、
「いそげ、振り向くな」
と、水夫たちを叱咤した。
江頭の人影は、刻々、多くなって、騒ぎ立っている。中にひとり目立っているのは、常山の趙子龍、即ち江辺守備の大将であった。
三
「おういっッ。待て」
船の影を追いながら、趙雲は岸に沿って馬を飛ばした。部下の兵も口々に、
「のがすな。あの船を」と、十里も駆けた。