Classici giapponesi con furigana
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さんごくし
三国志(五)
吉川 英治
Leggi 三国志(五) (さんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N1. Tocca una parola per il significato.
N1 · avanzato · kanji e kana moderni · 325.249 caratteri · 653 schermate
三
「逃げたいものだが?」
山中の闇をさまよいながら、しきりと苦慮してみたが、麓へ降りれば、すべて呉の陣に満ちているし、仰げば峨々たる西山の嶮峰のみである。折角、小舎は出てきたものの、
「どうしたものぞ」と、悄然、行き暮れていた。
すると彼方の林の中にチラと燈火が見えた。近づいてみると、家があるらしい。林間の細道をなお進んでゆくと、朗々読書の声がする。
「はて? ……こんな山中に」
柴の戸を排して、庵の中をうかがってみるに、まだ三十前後の一処士、ただひとり浄几の前に、燈火をかかげ、剣をかたわらにかけて、兵書に眼をさらしている様子である。
「……あ。襄陽の鳳雛、統らしいが」
思わず呟いていると、気配に耳をすましながら庵の中から、
「誰だ」と、その人物が咎めた。
蒋幹は、駈け寄るなり、廂下に拝をして、
「先日、群英の会で、よそながらお姿を拝していました。大人は鳳雛先生ではありませんか」
「や。そういわるるなら、貴公はあの折の蒋幹か」
「そうです」
「あれ以来、まだ、呉の陣中に、滞留しておられたか」
「いやいやそれどころではありません。一度帰ってまた来たために、周都督からとんだ嫌疑をかけられて」