Classici giapponesi con furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Leggi 土曜夫人 (どようふじん) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 106.903 caratteri · 213 schermate
九
銃声は守衛が威嚇的に射ったものだろう。誰かが川へ飛び込んだ。
北山ははっとわれにかえると、その一団にまじってぱっとかけ出して行った。北山の狂暴な血は一時に引き、野卑な顔はただ狼狽の色に歪んでいた。
九
逃げろ、逃げろという声は、拘置所を脱走して来た未決囚の一団が、良心の囁きに傾きがちな不安な耳へ、ぶっつける群衆心理の叫び声であったが、北山の耳は、
「お前も逃げろ!」
と、聴いたのだ。だから、その一団にまぎれ込んで駈け出しながら、北山は自分もまた囚人であるかのような錯覚に、青ざめていた。
その夜、脱走した囚人は、あとで警察へ報告されたリストが四度も訂正されたくらい故、その時は誰も正確には判らなかったが、ざっと数えて百名ぐらいはあったろう。それが三方に分れて逃げたらしく、中之島公園へ逃げて来た連中はざっと三十名ばかり、差入れの着物や洋服などのいわゆる私服を持たぬ青い官服の囚人姿の者がその大半だったので、一眼見るなり拘置所からの脱走者だと判った。
その官服の青さは、月明りに照らされていたので、一層なまなましい不気味さに凄んで、悔恨の心のように北山の心に突きささったのだ。