Classici giapponesi con furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Leggi 土曜夫人 (どようふじん) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 106.903 caratteri · 213 schermate
六
「しかし、その汗は、男に絞り出された汗じゃないか! 男と手を握り合って流す汗じゃないか」
木崎は苛々した声で言った。陽子はものも言わず、いきなりハンドバッグを掴んで、起ち上った。
六
「おやッ!」
怒ったのか――と見上げた木崎の顔へ、陽子は投げつけるように、
「げすッ!」
白い眼をキッと向けたかと思うと、もう背中を向けていた。
そして、さっと部屋を出て行こうとしたが、はいてみれば草履はみじめだった。陽子は半泣きになったが、しかし、ドアの音だけは、さすがに自尊心のように高かった。木崎はぽかんと坐っていた。
「何がげすだッ!」
と、追って行こうともしなかったのは「げす」と言われたことに、むしろ喜びを感じていたからだ。
勿論、木崎は自分をげすだとは思っていなかった。しかし、女というのを官能の角度からでしか見られない自分のデカダンスを、もはや主張する気にもなれないくらい、木崎はデカダンスであったが、しかし、げすと言われたことに甘んずる自虐の喜びではなかった。
陽子が自分を「げす」と呼んで、ふんがいして出て行ったことを、デカダンスの沼に溺れている自分が掴むせめてもの藁にしたかったのだ。